鈴屋デザインは「版画の秋」を過ごしています。

秋の日差しに当たる紅葉

秋は、不思議な季節。食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、そして芸術の秋。
そうやって「〇〇の秋」と名付けることで、日本人は知らず知らずのうちに、少しばかりの気まぐれやわがままさえも季節に許してもらえているような気がします。

そんな秋の懐の広さと優しさに甘えている10月。

私、鈴屋一は鈴屋仁とともに、小樽市内のアンティークショップ「らくだ色」を訪ね、一枚の版画作品に出会い、その魅力に抗えず購入しました。

斎藤清の年賀状

版画家、斎藤清の年賀状「迎春 1965」

斎藤清

1907年、福島県会津坂下町に生まれる。14歳で小樽に奉公に出て、働きながら絵を描き始める。24歳で画家を志し上京し、油彩画で白日会展や国画会展に入選。その後、1936年の日本版画協会展入選を機に版画制作に専念。1951年、第1回サンパウロ・ビエンナーレ展に出品した《凝視(花)》で日本人賞を受賞。以降、日本の現代版画を牽引し、国内外で高い評価を得るとともに、その国際的地位向上にも貢献した。

「斎藤清 版画展」より一部抜粋

年賀状といえば、紅白の組み合わせが一般的ですが、斎藤清のこの作品は、黒を基調にするという大胆な手法を取り、あえて赤と白の色領域を制限することで、視覚的な白の「余白」ではなく、感覚としての「白を感じる空間」を演出しています。黒という沈黙を想起させる色が大部分を支配する一方、限られた赤と白の領域が見る者の視覚を強く引きつけ、抑制された色彩がもたらす内的な緊張感と未然の爆発力を巧みに生み出している作品と私鈴屋一は解釈しました。

「いっぺん、版画でもやってみたらどうよ」
(こんな喋り方かどうかは知りませんが)

と、斎藤清に囁かれたような気がして、私たちは小学校の図工以来となる木版画に挑戦。

版画を彫る鈴屋仁

どうせなら小樽にまつわる何かをテーマにしようと、深く考えず、まずは手を動かしてみることに。

「最近寒くなってきたから、温泉でも行きたい」
「温泉がダメなら、何か温かいものでも食べたい」
「何年か前に食べた鰊蕎麦が美味かった」
「出汁が良いんだよ、鰊の」

なんて、中身のない会話をしながら彫り進める鈴屋仁。

「食欲の秋」に頭を支配されながら制作した作品がこちら。

刷った版画

「露天風呂に浸かる、鰊」

「あ゙ぁ〜、気持ちいい」ではなく、「あ゙ぁ〜、うまい」になってしまったのは、我々が「鰊の出汁」について話していたからでしょう。「鰊の浸かった残り湯からは、さぞかし良い出汁が出るに違いない」と、妄想を巡らせながら制作を進めるうちに、色々な意味で「味のある」版画が出来上がりました。

このまま下手な版画を作っただけでは、我々の創作意欲は満たされるわけもなく。満足できる作品に仕上げるため、さらに手を加えることにしました。

飲む小樽だし「鰊」

作品の詳しい内容は、“飲む小樽だし「鰊」”をご覧ください。

どうでしょう、このパッケージデザイン。
そのままお湯に入れて飲んでも良し、料理に使っても良しの粉末出汁を考えてみました。これからの寒い季節にぴったりの商品ではないでしょうか。

とまぁ、鈴屋デザインは、「版画の秋」ならぬ、「食欲の秋」を楽しんでいます。
皆さんも、素敵な秋をお過ごしください。

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